ワインの味わいに関わる醸造方法の違い

先日、2025年11月15日、学友会主催のふれあい懇親会(食糧学院全学の合同同窓会)を開催いたしました。
今回は駒場東大のキャンパス内のフレンチレストラン「ルヴェ・ソン・ヴェール」にて、本校の先生と在学生の講演を拝聴した後、長野県大鹿村の鹿肉をメインに同村の野菜果物を使っていただき、フランス料理のフルコースとそれに合うワインを堪能していただきました。




その際のワインの選定をいたしましたが、料理とのペアリングを楽しんでいただけるようシャンパン,白ワイン,赤ワインをご用意しました。
さてそこで今回のワインの楽しみのコラムは、同じ品種のワインでも醸造方法の違いで味わいが変わってくるというお話です。最初にお料理とワインをご紹介します。
1.ワインと料理のペアリング

🍷シャンパーニュ&シャブリ①
🍽️ビーツのサラダとシァルキュトリ(パテやテリーヌ)

🍷シャブリ②
🍽️帆立貝柱のムースリーヌと対馬産スズキのポワレ

🍷バロン・ド・ブラーヌ シャトー・ブラーヌ・カントナック
🍽️大鹿村よりの鹿肉のロースト 大鹿村のネギのフォンダン トリフ風味
2.醸造法の違いと味わいの変化
白ワインを2種類用意しました。品種はシャルドネ100%のフランスワインでは著名なシャブリというワインです。前菜がビーツのサラダとシェルキュトリ(パテやテリーヌ)でしたので、シャンパーニュの後1番目のシャブリを提供しました。そしてお魚料理に2番目のシャブリを出しまして、同じ銘柄のシャブリでも醸造法の違いで味わいが変わり、料理との相性も変わってくることを感じてもらいました。
前菜がサラダ中心ですので、酸味のきいたきりっとした味わいのシャブリです。
お魚料理は帆立貝柱のムースとスズキのポワレですので、少し熟成感がありコクのある2番目のシャブリをあわせました。そこでこの味わいの違いは何かということです。
➣ステンレスタンク発酵・熟成VS 一部樽熟成
➪1番目のシャブリ:発酵はステンレスタンクのみで行われ、低温を保って酸味を活かした作り。
ただ、発酵後澱とともに9ヶ月以上熟成したとありましたので、やや酸味も丸くなり澱からくる旨味的な面も出ていましたが、2番目に比べると柑橘系のフレッシュな香りや溌溂とした酸味があり、サラダのドレッシングの酸味との相性も良かったと思いますし、パテなども軽めな仕上がりで、このワインでも充分に楽しめたと思います。
➪2番目のシャブリ:発酵はステンレスタンクで行い、そのうちの10%のキュヴェを仏ブルゴーニュ産のオーク樽にて6ヶ月間樽熟しています。90%のステンレス熟成キュヴェも6ヶ月間のシュール・リー(澱とともに熟成)を行っています。
魚料理はムースとポワレで、バターやクリームが使われていますので、その味のコクやオイリーな面には1番目のシャブリでは負けてしまいますので、樽熟とシュール・リー効果が効いた2番目のシャブリが合います。
ヴィンテージも2022年と1番のシャブリの2024年よりも熟成感も増します。
3.熟成の違いによりワインの味わいが料理との相性にどう影響するのか。
2番目のシャブリは、酸味の軽減と樽から溶出するタンニンなどの成分、さらに澱から溶出するアミノ酸や有機成分が旨味やコクとなってワインの味わいに深みを与えます。クリームやバターなどの脂の濃い味わいに対し、これらが打ち消す働きをすることで、後味がさっぱりとしますし、魚の旨味成分とワインのアミノ酸などの旨味が相まってよりおいしく感じられ食が進みます。
同じシャブリでもステンレスタンクのみの発酵熟成と、一部でも樽による熟成をすることで、その味わいが変わってくることで料理との相性も変わってくるというお話でした。
もちろんボルドーの赤ワインと鹿肉のローストとの相性も抜群でした。
➣言葉の説明
➪シュール・リー:発酵後滓引きをしないで、澱とともに熟成する方法。澱=死滅した酵母の細胞・色素や
タンニン・細胞が分解され溶出するアミノ酸などの成分が沈殿したものでワインに旨味やコクを与えます。
➪キュヴェ:ワインの仕込み単位。特定のタンクや樽に入ったワインのことを指す場合もあります。
➪アミノ酸:タンパク質を構成する最小単位の成分。アミノ酸には甘味・苦味・旨味などの呈味があり、
旨味を呈するのは昆布や発酵食品などに多く含まれるグルタミン酸です。
次回もこのような醸造法の違いによる味わいの違いを取り上げます。
学友会 会長 廣嵜明博
