すがおプロジェクト 第2回 (2026年6月18日) 栄養士キャリア形成と保育園給食現場の実際 

 「すがおProject」は、食糧学院の卒業生に在校生が直接インタビューを行い、「卒業生の歩んできた人生や経験を在校生の視点でまとめて紹介する企画」です。 サイトをご覧の皆様に、卒業後の多様なキャリアや人生の歩みをお伝えしていきます。 

【卒業生ご紹介】
お名前: 福元 あや子 さん 年齢66歳
ご出身: 静岡県
ご卒業: 2021年 東京栄養食料専門学校 栄養士科 卒業
2026年6月の今は?: 坂戸保育園にて勤務 (富士産業株式会社所属)

学び直しを決意した背景 

福元さんは、生活クラブ生協関連会社で10年以上大量調理に携わる中で、栄養学や衛生管理の知識不足から「いつか大きな事故を起こすのではないか」という不安を抱えていたと語ります。
老人ホーム勤務時には、術後患者への不適切な食事形態指示や、アレルギー対応の不備など、知識不足が重大な事故につながりかねない場面に直面しました。こうした経験が「理論に基づく専門職」への転身を後押ししたといいます。
そして、人生100年時代のキャリア構築: 人生80歳まで元気でいられるとして、60歳代を「社会貢献の継続期」と位置づけています。そして、専門的な学びを必要としたこと、また、それを支えるための筋力トレーニング等の体力維持を両立させる生涯現役イメージを体現されています。

キャリア

 文学部卒業後は一般事務職として勤務し、30代では南米ペルーに滞在。電気が1日10分しか通らず、水も止まるという厳しい生活環境の中で、「水と衛生が命を左右する」という感覚を身をもって理解したことが、現在の衛生管理への強い意識につながっています。 

その後、惣菜会社で大量調理を学び、49歳で調理師免許を取得。53歳で老人ホームの厨房に入り、59歳で栄養士養成施設へ入学。現在は坂戸保育園でチーフとして現場を支えています。 

インタビューの内容を下記にまとめました!

在校生

学び直しのきっかけを教えてください

長年の実務経験がありながら、食に関する知識不足により老人ホームの利用者様に適した食事提供ができなかったことが背景にあります。
「調理の直感」と「栄養士の論理」との乖離があり、自分での判断ができないもどかしさがあげられます。 次のような「知識不足が人命を脅かす」という強烈な原体験があり、しっかり学ぼうと決めました。

  • 老人ホーム勤務時、入れ歯の高齢者に「枝豆を多用したサラダ」を提供する献立に疑問を感じ、「マッシュポテトに混ぜれば食べやすいはずだ」と思いつきながらも、献立作成権限がなく代替案を提示できないもどかしさを経験しました。 
  • 手術後の患者に対し、経験の浅い栄養士が本来提供すべき五分粥ではなく軟飯を指示してきました。 自分は疑問を感じながらも知識不足で反論できず提供した結果、家族や医師から激しい怒りの電話が入り、現場での信用を失いました。 

アレルギーや衛生管理の知識不足は、自身の身を守れないことと同義です。 事故が起きれば裁判沙汰になりかねないという恐怖心が、自分の中で専門職へのステップアップを促しました。 

在校生

保育園給食の現場で求められる専門性はどのようなものがありますか ?

保育園では約120食を提供しており、0〜3歳児の刻み食や離乳食など、年齢に応じた細やかな対応が求められます。外国籍児童へのハラル対応などもあり、個別性の高い運営が日常的に行なわれています。
他の保育園での話ですが、古い施設ではHACCP基準(衛生管理の国際基準)」を満たさない場合もあり、限られたスペースで食材が他の食材と混ざってしまうことを防ぐための工夫が欠かせません。 また、食材費の高騰と給食費据え置きの中で、栄養価と満足度を維持する「食材管理能力」も重要な役割となっています。

在校生

保育園で一番気をつけることは何でしょう?

「安全こそ最大のサービス」です。調味料に含まれる潜在的アレルゲンまで確認するなど、細やかなチェックを徹底しています。
ケチャップに含まれるりんご、醤油製造過程の小麦など、見落としやすい成分にも注意を払います。小麦アレルギー児には米粉パンや米粉麺を別調理し、専用スペースを確保するなど、作業導線の管理を徹底しています。
どの委託給食でも同じと思われますが、米価が倍増するなど食材費が高騰する中、給食費は据え置きとなっています。 限られた予算で栄養価と満足度を維持する「食材管理能力」が重要になります。

在校生

学校で得た学びをおしえてください

東京栄養食料専門学校では、包丁の研ぎ方から大量調理の動線設計まで、理論に裏付けられた実習が豊富であり、現在の「現場を回す力」につながっています。 余談ですが、他の栄養学校では調理実習が教科にないところもあり、東京栄養食料専門学校での学びは、卒業してからの強みと考えてください。

在校生

後輩へのメッセージをお願いします!

保育園の給食の仕事では、可愛い子供たちから「美味しかった」などの言葉をかけられると、元気を貰った感じがします。日々の仕事は大変ですが、頑張った甲斐があります。
最後に、「資格は一生のパスポートです」、ただし 「調理現場は体力勝負なので、学生のうちに体力を鍛えてほしい」 との励ましの言葉をいただきました。

【事務局からの感想】
福元さんは、食の専門職を「未来の人間形成」と位置づけ、子どもたちの心身を支えることを使命として日々現場に立たれています。
還暦を過ぎてもなお学び続ける姿勢は、専門職としての理想的なあり方を体現していると感じられました。

がやがや館にて(福元さん:中央に着座の方)
がやがや館にて
終了後に、皆で餃子を食べました

ご参加の皆様:
卒業生:栄46回生 安藤美幸さん
在校生:栄養科1年 乾友紀さん、管理栄養士科1年 山崎多恵さん
栄養士科2年 河合和輝さん、高度調理1年 岩田万里子さん
事務局:廣﨑、谷内、中静