学友会会長
前回は、白・赤・ロゼワインの醸造上の違いや味わいの違いという基本的なお話をしました。
今回は、それぞれのワインが醸造されるブドウ品種についてお話しします。
ブドウ品種について
実はワイン用のブドウは、一般的に私たちが果物として生食しているブドウとは異なった品種が主に使われます。
一部マスカット系品種や日本の甲州種の様に生食にも醸造にも使われるものもあります。
世界で栽培されているブドウ(Vitis)属は、ヴィニフェラ(ヨーロッパ系Vitis Vinifera)品種と、アメリカ系(Vitis Labrusca)品種に分類されます。
ワイン醸造には、ヴィニフェラ種が主に使われます。
ラブルスカ系品種
ラブルスカ系品種は北米系野生種の交配品種で、フォクシーフレーバーと呼ばれるグレープジュースの様な甘い香りを持つ品種で、欧州諸国ではグレープジュースに馴染みが少なく、ワインにこの香りがすることを嫌います。日本やアメリカ東海岸ではワイン醸造にも使われてはいます。
ヴィニフェラ種
ヴィニフェラ種は、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方が原産で、新石器時代に栽培が始まったとされています。ここからブドウ栽培とワイン醸造がメソポタミアやエジプトに伝わり、地中海沿岸に広がります。さらにローマ帝国によってヨーロッパ内陸部に伝播されました。また、東方のアフガニスタン、中国等に伝えられた品種もあります。この品種は夏期に雨が少ない地中海性気候に適していて、日本では梅雨や秋の長雨等があり、栽培が難しいようです。またアメリカ大陸から持ち込まれたベト病やうどん粉病に弱く、さらに寄生害虫のフィロキセラに感受性で、現在はほとんどの場合耐性を持つ台木に接ぎ木されて栽培されています。
交配品種
日本では気候的にヴィニフェラ種の栽培が難しく(現在は様々な栽培技術を使ってヨーロッパ系ブドウ品種は栽培されてはいます)、栽培適正の優れた品種育成のため交配育種が行われてきました。川上善兵衛によって育種されたマスカット・ベーリーA、ブラッククィーンは日本のワイン用品種として重要です。
さて、専門的なお話で恐縮でしたが、これらの品種によってさまざまなワインが醸造されます。
赤・白・ロゼだけでなく、ライトボディ~フルボディ、様々なフレーバーのワインがこれらの品種によって生産されています。
次回は、フランスやイタリア、ドイツなど古くからのワイン文化を持つ国々の主要なワインとブドウ品種を取り上げます。
ワインをよくたしなむ方なら、リースリング、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、等々馴染みのある品種名です。
これらの国や地域などの気候風土の特徴を踏まえた、ブドウ品種の特性やワインについてお話します。
学友会会長
廣嵜明博