「三流シェフ」を読んで

この本の著者である三國清美さんは料理人であればほとんどの方が名前を知っている方ではないかと思う。一般向けの家庭料理の本も出版され、料理を作る様子を投稿したYoutubeチャンネルを持っているので一度は見たことがある方も多いかと思う。素材本来の魅力を活かし日本本来の食材を用いたフレンチ料理が特徴といえる。 

今回私がこの本を選んだのは三國さんのレシピ本を持っていたこととなぜ彼が自身の自伝に三流シェフと名付けたのかと気になったからである。 

北海道出身で貧しく厳しい幼少期は父親の漁を手伝いながら学校に通い、中学を卒業すると住み込みで働き夜間の調理師学校に通った。その下宿先で食べたハンバーグがきっかけで札幌のグランドホテルを知り、そのホテルの料理長に直談判し飯炊きから始まり帝国ホテルを経てフランスの著名なレストランで修行を重ねる。そして帰国後は日本国内でレストランを開業し、現在では13店舗を構えている。 

読んで思ったことは、思い切った行動がその先の人生を大きく変えることがあるのだということ。なんとなく言われたことを行なって都合よくいつかいつの日かとチャンスが訪れることを待つのではなくまず自分から行動する、ただ目の前にある事を無我夢中にやる。今自分にできることは何か?どうすればこの道が繋がるのかと考えることが成長する上で必要なことではないかということ。 

三國さんは「料理の神様」がいる東京の帝国ホテルで働くことが叶ったものの、洗い物のパートタイムをすることしか許されなかった。少し前までは札幌のホテルで花形と言える仕事をしていた。多くの人が「それなら札幌に戻ろうかな」「他のところで働こうかな」と思うのではないだろうか。しかし三國さんは料理人として社員になるため虎視眈々とチャンスを窺いながら「大切なのは目の前の仕事を、誰よりもしっかりこなすこと。鍋でも皿でも、誰よりも手早く、誰よりも綺麗に洗う。洗って、洗って、洗うものがなくなったら、厨房を見回して、誰か忙しそうにしている人を手伝う。」と述べた。帝国ホテルに入り二年間洗い物をして言われた訳でもなく料理長の助手を勝手に務めた。チャンスは訪れなかった。三國さんはそう思い退職することにしたが料理長は大使の料理人という大役を当時20歳の三國さんに与えた。三國さんはチャンスを掴んだのであった。 

決して恵まれた環境にいた訳でもなく後ろ盾のない彼がどのように人生を切り拓き成功することができたのか、ヒントや手助けとなるものはいつでも自分のすぐ近くにあるではないかと著書を読み料理のことだけでなく沢山の発見をすることができた。自分自身は恵まれた環境にいる訳だがこの環境を当たり前と思わず目の前の仕事を一生懸命する、チャンスが来るのを待つのでなく自分から掴みに行く。その姿勢を他の人に見せる。栄養士として調理師としてこれが自分ができることではないかと思った。 


栄養士科78回生 加藤美里