先生、前回の続きですが、AGEs生成について教えてください。 おさらいですが、ブドウ糖がタンパク質と結合して、何回かの化学反応のステップを経てAGEsになると記憶しております。

そうですね、化学的に説明するとなると、ブドウ糖が「ホルミル基(−CHO)」という「くっつきやすい手」を持つ形になって、タンパク質の「アミノ基(-NH2)に結合するんです。

ありがとうございます。それでは、ブドウ糖が「ホルミル基(−CHO)」を持つとは、どういうことなのですか? ブドウ糖は環状構造で、ソノママでは体内でエネルギー源として利用されないので、酵素などで代謝されて分解されてゆくと思いますが、その行程で何かしらの「くっつきやすい手」を持つ型になるのでしょうか?
通常、自然界では、ブドウ糖は環状分子の構造で丸くなっていて比較的安定した物質と、反応性の高いホルミル基(官能基として用いる場合では、アルデヒド基)を持つ2 つの状態で存在しています。
なお、直鎖構造のブドウ糖は少ないのです。また、より正確には「水溶液中で直鎖構造はごく一部(0.01% 前後)しか存在しない」のですが、 「直鎖が少ない=AGEs が起こらない」ではなく、時間と濃度の積算で長い時間をかけて糖化が進む、と考えてくださいね。

水溶液中で相互に入れ替わる平衡は、環状構造に偏って存在している。
ご説明ですと、多くの方のご協力で行った糖化度測定での結果のイメージとは異なる気がします。同じ年齢の方でも、糖化が進んでいる方と進んでいない方がいらっしゃいます。
この違いは、自然界に少ししか存在しない直鎖構造のブドウ糖を奇跡的に多く摂取された方のみ糖化が進んでいるのですか????
その質問は面白いですね。
この環状構造と直鎖構造の比率(0.01% 前後)は平衡状態を保つといわれ、直鎖構造のブドウ糖が少なくなると、自動的にかつ速やかに環状構造のブドウ糖が直鎖構造に変化すると考えられています。
このため、「直鎖構造が少ない=AGEs が起こらない」ではなく、長期的な高血糖状態ではAGEs 生成反応が盛んになる可能性があるので、要注意事項として注目されているのです。
この直鎖構造ブドウ糖がAGEs生成の一番の悪人と考えて良いのでしょうか? 定期的に測定されている被験者の方々で、糖尿病や予備軍でもないのにも関わらず、急激な糖化度の上昇・下降も見られるので、長期的な高血糖によって少しずつ蓄積してゆくイメージとは異なる気がします。
最近注目されている血糖値スパイクなどで、余分な糖質が体内に存在すると、AGEs生成が進むとお話しましたね。 血糖値スパイクで余分なブドウ糖は代謝されるのですが、そのときの多くのブドウ糖は環状構造をしていると考えられるので、直鎖構造のブドウ糖がAGEsを生成する主人公であるとは想定できませんが、ホルミル基(アルデヒド基)は周りのタンパク質と反応します。
ただし、高血糖状態になるとインシュリンがでて、体内の細胞へのブドウ糖の取り込みが急速に進み、血管内の血糖濃度は急減します。 しかし、高血糖が続いたり、血糖値スパイクが生じている場合などは、ブドウ糖が体内で代謝され化学反応によりアルデヒド基を持つ化合物を多く生成します。
そして、このホルミル基(アルデヒド基)を持つ化合物が、最近の研究では糖化反応の主たる原因と考えられていますよ。
先生、もっと基礎から話してください!
基礎からですね、物質は原子が集まった分子・化合物で出来ているのです。
分子や化合物が結合するには、様々な条件があるのですが、糖化においては、ブドウ糖が代謝される過程で中間代謝産物としてアルデヒド類(グリオキサール、メチルグリオキサールなど)が生成され、アルデヒドという「くっつきやすい手」のようなものがついた化合物になってしまうのです。 アルデヒドとは “-CHO” という反応しやすい部分(くっつきやすい手)を持つ化合物のことと定義されていて、この「くっつきやすい手」は「ホルミル基(−CHO)」といって、アルデヒドとは「ホルミル基」を持つ有機化合物の総称ですよ。

ただし、ブドウ糖がアルデヒド化したとして、その全てが「くっつきやすい手」によりタンパク質がAGEsを生成するのではないので、注意が必要だね。 アルデヒドは「くっつきやすい手」を持ち、タンパク質のアミノ基と非酵素的に「くっつく(結合)」するけれど、体の中には「手袋をかぶせる係」もいて、くっつく前に安全な形に変えてしまうケースもあります。
例えば、AGEsを生成できなくするようなアルデヒドの代謝例として、アルドース還元酵素(AR)による還元反応が挙げられますよ。
これは「くっつきやすい手(反応性カルボニル基)」を持つアルデヒドを、より安定なアルコールに変換することでAGEs生成を回避する経路です。 そして、このARは長寿命タンパク質である腎臓・水晶体などに多く存在するので、糖化されては困る臓器を守っているともいえるね。

理解できたところまでですが、AGEsについて、アルデヒドの簡単な表を参考まで作成してみました。
また、直鎖構造のブドウ糖も「ホルミル基(−CHO)」という「くっつきやすい手」を持っているので、糖化におけるアルデヒドの一つと考えられますね。

そうだね、直鎖構造のブドウ糖の位置づけに関しては議論があります。しかし、糖化においては「-CHO」を持つアルデヒドがAGEs生成における悪者なので、この物質を作らないよう、また体内で早めに代謝するように生活習慣を整えることが重要なのですよ。

先生、概念は理解できましたが、もう少しアルデヒドについて教えてください。 そういえば、お酒を飲むとアセトアルデヒドが出来ると聞いています。ですので、アルコールと糖質と、糖化に関する最近の学説もあればありがたいです。
そうですね、多くの研究者がアルデヒドを課題として研究を進めているので、次回以降で可能な範囲でお話をしましょう。。
岡部 敬一郎: 食糧学院長寿健康ベターエイジング研究所 所長・理学博士、 (元)東京栄養食糧専門学校校長
中静 隆: 栄養士科81回生、健康長寿ベターエイジング研究所 客員研究員
