カロテノイドのお話し(5)

所長

糖化度とカロテノイド測定時にアンケートもお願いしており、様々な分析をしている資料のうちの1つを参考にみてみましょう。
 これは野菜と相性の良い「玉子」をメインに分析したものですが、健常者の傾向がうまく表現されている可能性があるので、紹介しますね。

研究員

玉子が完全栄養食というのは、何でですか? 完全栄養食なら玉子だけ食べていたら、栄養充分で健康になるんじゃないのですか?

所長

玉子には、厚生労働省が定めた「人が健康を保つために必要な1食分の栄養素」がすべて含まれているため、完全栄養食と呼ばれているんです。 ただし、炭水化物、食物繊維やビタミンCについては、玉子での含有量が少ないか含まれていないので、他の食材から補完しないといけないんですよ。
このため、玉子を多く摂取する方は、自然と食物繊維やビタミンCが多く含まれる野菜を摂取しているのかもしれませんね。

研究員

ご飯に生玉子、パンと目玉焼きとか、よく朝食に食べます!
そういえば、目玉焼きにはレタスとか野菜の付け合わせが合いますね。

所長

そうだね、昔から目玉焼きにサラダを付けていて、長い間の食生活でベストマッチの組み合わせを考案していたんでしょうね。 また、野菜サラダにも、ゆで卵が入っていることが多いですよね。
朝食であっても野菜は大切だから、サラダや野菜ジュースなども一緒に摂ることが大事ですね。

研究員

アンケート結果で高齢者になるほど、「バランス良い食事」と「玉子摂取」の回答件数が多くなっていますね。
若年層から中年層は、なかなか「バランス良い食事」を摂れないのでしょうか?

所長

そうだね、仕事で忙しいなどの要因もあるけれども、自分の健康管理を行うための指標を適時に得られない可能性があるかもしれないね。 たとえば、40歳以上になると特定健診を受けるのですが、これは主に生活習慣病の早期発見と治療を目的とするため、この年齢層以下の健康診断とは検査項目などが異なるんです。
この時点で、特定健診の数値が芳しくないため、医療機関から「バランス良い食事」を勧められて、生活改善に努める方もいらっしゃると思いますよ。

研究員

でも、健康診断は1年に一回ですよね。

所長

そこが問題なんだね。年に一回でいい検査もあれば、数か月のスパンでの数値を見ることが好ましい検査もあると思いますよ。 健康診断に加えて、健常者が日々生活してゆくうえでの身体の変化については、適宜、糖化度やカロテノイドの測定も行うことをご検討いただくとよいですね。この測定結果を見て、生活習慣を見直す契機になれば良いにでは、と考えるんです。

研究員

糖化度やカロテノイドなどのバイオマーカーについて、簡単に身体の状態を計測できる機械があれば、健常者の健康増進に役に立ちますね。そして、栄養士の活躍できる舞台が広がる可能性がありますね。

所長

そうだね。アンケート結果と計測結果を組み合わせて、適切な栄養アドバイスができると良いので、今後も積極的に皆様のデータを集めて分析を行うことですね。
次回は、アンケート項目間の相関関係をもとに分析した結果をお示しましょう。

岡部 敬一郎: 食糧学院長寿健康ベターエイジング研究所 所長・理学博士、 (元)東京栄養食糧専門学校校長 
中静 隆: 栄養士科81回生、健康長寿ベターエイジング研究所 客員研究員